①歯科衛生士ミッキーの離乳食研究とは
こんにちは、みなさん!歯科衛生士のミッキーです。
私は10年以上にわたって、赤ちゃんの「噛む力」を育むための離乳食研究を行っています。
歯科衛生士として長年診療に携わる中で気が付いたのは、気がついた事が「むし歯予防にはブラッシング以上に食生活が大切である」ということでした。これは確信を持ってお伝えできます。
習慣化された甘いものへの欲求の断ち切りは、意思の強さだけではとても難しいものです。なぜならば、乳幼児期に育まれた味覚は一生続くものだからです。
味覚形成が完成されると言われている3歳までの食生活を大事にしたいと辿り着き、食育を伝える場として「ママ・キッズカフェ」を運営しました。(2007年〜2022年までの15年間)
カフェで提供していたメニューは厚労省の指針を基にした、ごく一般的なものでしたが、月齢に合わせて離乳食を進めている赤ちゃんでも食べてはくれませんでした。
「食べないのではなく”食べられない”のではないか?」と思うようになり、提供する離乳食が本当に赤ちゃんたちのお口に合っているのかを検証することに。
そこから手づかみ離乳食の研究が始まったのです。
「歯科の食育」とは何かを考えた時に、「よく噛む子を育む」という目標に辿り着き、現在では毎月1回、赤ちゃんモニターに離乳食を提供し、幼児期までの成長を「口・心・体」の3つの視点で観察しています。
今回は、「一般的な離乳食」と「手づかみ離乳食」の違いについて、管理栄養士と共に研究を進めたときのお話をしていきます。
②一般的な離乳食と手づかみ離乳食の違い
1:一般的な離乳食
- 生後5~6ヶ月頃にスタート
- 月齢に応じて進める
- 主にスプーンで保護者が介助して食べさせる
- 9ヶ月頃から手づかみ食材を少しずつ導入
- 離乳食後の授乳もOK(不足分を授乳で補充)
2:手づかみ離乳食
- 赤ちゃんが一人で座れるようになったらスタート
- 赤ちゃんの成長に合わせて進める
- 食事の後半、赤ちゃんが疲れたらスプーン介助も可
- 初期から手づかみ食材を用意し、赤ちゃんが自分で食べる
- 舌の動きに合った柔らかい食材を選ぶ
- 離乳食後の授乳はしない
主な違いは、一般的な離乳食が保護者主導で進められるのに対し、手づかみ離乳食は赤ちゃんが主体的に食事に参加するという点です。
③本日の離乳食研究:「離乳食スタートは6ヶ月って本当?」
本日の研究テーマは、よく耳にする「離乳食は生後6ヶ月から始めるのが良い」という説についてです。一般的に、離乳食は生後5〜6ヶ月頃に始めるのが推奨されていますが、その理由は以下の点に基づいています。
- 消化機能の発達
生後5〜6ヶ月頃になると、赤ちゃんの消化器官が固形物を消化できるように発達し、母乳やミルク以外の栄養を摂取できる準備が整ってきます。 - 栄養補給の必要性
生後6ヶ月以降、母乳やミルクだけでは鉄分やその他の栄養素が不足することがあるため、離乳食からこれらの栄養を補う必要があります。 - 発達面での準備
この頃には、赤ちゃんが首や頭をしっかり支えられるようになり、座って食事をする準備が整います。口の動きや舌の発達も進み、食べ物を飲み込む力がついてきます。 - アレルギー予防の観点
一部の研究では、5〜6ヶ月頃に離乳食を始めることで、食物アレルギーのリスクを減らす可能性があるとされています。
以上の点から、生後5〜6ヶ月頃に始めることを推奨されていますが、ここで私が疑問に感じたのは、実際には生後5〜6ヶ月で自分で座れる赤ちゃんが少ないという現実です。座ることができなければ、食べ物を上手く取り込み、飲み込むことも難しいのです。
「自分で座れる」ということは、腰が立ち、頸椎(首の部分にある背骨の一部)と頭を正しい位置で支えてバランスが取れる状態を指します。頭と首が自然な位置に保たれると、食べ物や飲み物が喉を通る道がスムーズになるということです。首が前や後ろに傾いていると、食べ物が気管に入るリスク(誤嚥)が高くなってしまいます。
また、食べる行為は口唇、舌、あご、そして飲み込みのための器官たちが動きやタイミングを学習していくこととも言えます。そのためには土台となる頭や体幹が安定して座れていることで、口の周りを緊張させずスムーズに動きを学習していくことができると考えています。
例えば赤ちゃんの体の成長と舌の動きには深い関係があります。舌の動きは、前後、上下、左右の順番に発達していき、そのあとで回すなど自由に動かすことができるようになってきます。
生まれてすぐは、ママのおっぱいを吸うため、乳首をしごけるよう舌を前後に動かすことができます。これは反射によるもので、お母さんのお腹の中にいるときから筋肉を使っています。しかし上下の動きに発達していくためには、今まで使っていなかった筋肉が育つ必要があります。
この舌の筋肉たちがしっかりと働くためには、背骨や頭の骨の位置が重要となります。そして、この位置とは背骨と頭がしっかりと重力に対して安定して座った姿勢のことなのです。
そのために赤ちゃん自身がしっかりと座れる筋力とバランスの発達が舌の発達にもの欠かせないのです。
やはり私は順調に離乳食をスタートさせるためには、赤ちゃんが「自分で座ることができる」という条件が必須なのではないかと考えています。
今回の赤ちゃんモニター「Aちゃん」は生後6ヶ月後半。
自分で座れるようになっており、理学療法士にも確認してもらいました。体の準備が整っているので、一般的な生後5〜6ヶ月の離乳食スタートに当てはまります。6ヶ月の時点で自分で座れる赤ちゃんに出会ったのは今回が初めてのことでした。
④まとめ
「離乳食が進まない」という声をよく耳にしますが、これは赤ちゃんの体の準備が整っていないことが原因のひとつです。自分で座ることができない赤ちゃんの場合、離乳食をうまく進められないことが多いです。近年の環境の変化により、赤ちゃんが自座位をできるまでに少し時間がかかる傾向が見られます。
ミッキーのこれまでの研究結果から、赤ちゃん自身が座れるようになるまでは、離乳食のスタートを待つべきと考えます。赤ちゃん一人ひとりの成長ペースに合わせることが重要です。
皆さんも、お子さんの体の成長をよく観察して、焦らずに離乳食を進めていってくださいね!