赤ちゃんの寝返りは、首座りに続いて赤ちゃんの体の成長を知るためのわかりやすいポイントであり、ママ・パパにとって楽しみにしていることのひとつと言えます。赤ちゃんの寝返りの時期や、寝返りができるようになるためのサポートや注意点などを解説していきます。
①寝返りとはどういう動作?
寝返りとは、赤ちゃんがあおむけの状態から身体をひねってうつぶせに変わる動作のことです。
赤ちゃんの運動機能は、頭から足方向へ下がりながら順番に発達していきます。目、首、肩、腕が自分の意思で動かせるようになり、やがて背中、腰まで達すると、寝返りができるようになります。
赤ちゃんの成長過程の一つとして、寝返りができることを心待ちにしているママ・パパも少なくないでしょう。赤ちゃんにとっての寝返りは、睡眠時に姿勢を変えるだけでなく、興味のある対象に近づくための動作でもあります。また、寝返りをすることで身体を回す筋肉が鍛えられるなど、身体発達面での効果もあります。
寝返りでうつ伏せになり、さらに気になるものを手に取ろうと手を伸ばしているうちに、ハイハイができるようになります。寝返りは、ハイハイができるようになるためにも、欠かせない動きなのです。
寝返りまでの4つの段階
寝返りは足、腰、首、手の連続した動きです。赤ちゃんの寝返りは大人と違ってスタートが足の動きからとなります。赤ちゃんが寝返りを完成させるまでの4つの段階を見ていきましょう。
1:足の動き
仰向けになった状態から、赤ちゃんはまず足を交差させます。下半身のひねりから寝返りの動きが始まります。
2:腰と肩の動き
足を交差させると体の軸が不安定になるため、赤ちゃんはバランスを取ろうと腰をひねります。そして回転の視点となる肩のひねりの動きに移ります。体を横に傾けているうちに、自然と重心が移り、体が転がりうつ伏せの状態になります。
3:首の動き
腰と肩の連続の動きのあと、首を回すことで寝返りを助ける重心移動を行います。腰と肩、
首の連動が寝返りのポイントです。
4:手の動き
体がうつ伏せになっても、片方の腕が体の下に踏んでしまっている状態になっています。この腕を自力で抜くことができると寝返りの完成となります。
反り返りは寝返りではない
赤ちゃんの寝返り時期は早ければいいというものではありません。3ヶ月で寝返りをしたという場合、それは寝返りではなく「反り返り」かもしれません。
赤ちゃんの体は本来やわらかくふわふわしますが、体が硬くなっている赤ちゃんの場合は、体を突っ張らせることで偶然ひっくり返えることがあります。これを「反り返り」と言い、寝返りとは異なります。
赤ちゃんの体が硬くなってしまう原因のひとつに、毎日の抱っこ姿勢があります。抱っこ姿勢に無理があると、赤ちゃんは落ちないようにと体を硬くし、過緊張状態となります。
抱っこの時に赤ちゃんが背筋を伸ばし、のけぞるような姿勢の「反り返り」を頻繁にする場合は、体が硬くなっている可能性があるので、抱っこ姿勢を見直してみましょう。母歯ネットワークでは、辻直美先生考案の「まぁるい抱っこ®」を推奨しています。
また、赤ちゃんの体にやさしく触れ、筋肉をほぐしてあげるのもよいでしょう。
②赤ちゃんが寝返りするのはいつ?
赤ちゃんはいつごろから寝返りするのでしょうか。個人的な差はありますが、目安となる時期を見ていきましょう。
寝返りの目安時期
2010年に厚生労働省が行った「乳幼児身体発育調査」の結果によると、生後6~7カ月ごろに寝返りができる赤ちゃんは全体の9割を超えます。赤ちゃんが寝返りを始める時期は、一般的に生後5~7ヶ月が目安と言えるでしょう。
「寝返りができた」とは、左右どちらの方向にでも、あお向けからうつ伏せに姿勢を変えられるという点で判断します。6ヶ月の乳幼児健診で寝返りの様子を医師が確認しますが、この時期は個人差が大きい時期になりますので、まだ寝返りが出来ていなくても大きく心配することはありません。
寝返りする前の前兆
赤ちゃんの寝返りはいきなりできるようになるものではなく、兆候となる動作があります。
首が座った後に、赤ちゃんが仰向けの状態のときに「両足を上げる」「手足を左右に動かす」「腰を動かすようになる」「手で足先をつかむようになる」といった動作をするようになったら、寝返りまでもう一歩といわれています。
③赤ちゃんが寝返りしない原因は?
多くの赤ちゃんが7ヶ月頃で寝返りができるようになるため、8ヵ月を超えても寝返りをしないと心配になってしまいますよね。赤ちゃんが寝返りをしない原因どこにあるのか見ていきましょう。
寝返りしづらい環境
寝具が柔らか過ぎることはないでしょうか。赤ちゃんの体が敷き布団やマットレスに沈んでしまっていると力を入れにくいので、体をひねっても回転できません。敷布団やマットレスを硬いものに変えると寝返りするようになる場合もあります。
日中は、寝返りしやすい広めのスペースで過ごすのがおすすめです。ベビーベッドやバウンサーなどにいる時間が長いと、動くスペースがなく寝返りをしにくくなります。
また、厚着をしている時も寝返りがしづらくなります。赤ちゃんが動きやすい服装を心がけましょう。
うつ伏せ姿勢をしたことがない
赤ちゃんにとって仰向けでいることが心地よい場合は、あえて寝返りをしようとはしません。ずっと寝かせっぱなしにしていないでしょうか。親のサポートとして、うつ伏せの姿勢を経験させることも必要です。仰向けとうつ伏せでは赤ちゃんから見える世界が全く別のもので、初めてのうつ伏せ姿勢から見える景色は赤ちゃんにとって刺激的なものでしょう。うつ伏せを初めてさせた時に泣き出すこともあるかもしれませんが、赤ちゃんの機嫌がいい時に、1回2~3分を1日に数回から始め、慣れてきたら回数や時間を少しずつ増やしていきましょう。
④寝返りを促すためのサポート方法
なかなか寝返りをしないと不安な気持ちになってしまいますよね。赤ちゃんのために保護者ができるサポートや、練習方法をご紹介します。赤ちゃんの機嫌がいい時に、次の方法のいずれかを試してみてください。
うつ伏せで遊ぶ
前述したように、うつ伏せの姿勢に慣れてもらう意味もありますが、うつ伏せ遊びをすることで、赤ちゃんの腕や足、肩や背中などの筋肉が強くなり、ハイハイや寝返りを促すことができます。あのおもちゃが欲しい、あのおもちゃの所に行きたい、と赤ちゃんが思った時に、手足の筋肉をスムーズに動かして移動することにも役立ちます。
赤ちゃんの視線の先におもちゃなどを置く
「気になる」「やってみたい」と子どもの内側から湧き上がる好奇心は寝返りを手助けします。赤ちゃんのお気に入りのおもちゃを原動力に変えましょう。いろいろな方向から興味を引くことも寝返りの練習として効果的といわれています。
赤ちゃんの寝返りしそうな方向から名前を呼ぶなど声をかけたり、音のなるおもちゃを鳴らしたりすると、赤ちゃんが興味を持って寝返りをしようという意欲につながります。
腰や背中を支える
赤ちゃんが身体をひねり、寝返りしそうになった時に、赤ちゃんの腰と背中に手を当てて寝返りしやすいように優しく支えることもよいでしょう。寝返りをするのに必要な身体の使い方を赤ちゃんが覚えていくことにつながります。
以上のようなことが寝返りの練習として効果があるといわれています。赤ちゃんの様子も見ながら、無理のない範囲で試していくとよいでしょう。
⑤赤ちゃんが寝返りしたら注意すること
赤ちゃんの寝返りができるようになると保護者はうれしいものですが、赤ちゃんの安全を守るために注意したい点もあります。以下のことに気を付けましょう。
うつ伏せによる窒息事故 乳幼児突然死症候群(SADS)
まだ自分の意思でうまく体が動かせない赤ちゃんにとって危険なのは「窒息」です。赤ちゃんが寝返りするようになっても、まだ首がしっかりしていないこともあり、うつ伏せになったまま動けなくなることがあります。クッションや毛布などの柔らかいものが赤ちゃんの近くに置いてあると、うつ伏せになったときに赤ちゃんの顔が埋もれてしまう可能性があります。赤ちゃんの近くには、クッションや毛布などのやわらかいものを置かないように注意しましょう。
ベッドやソファからの転落事故
寝返りを始めると赤ちゃんの動く範囲が増えるため、ベッドなど高い場所から転落する危険があります。ベビーベッドの柵はしっかり閉めておきましょう。縁側やソファの上でも注意が必要です。壁側に寝かせたり、ベッドガードを設置したりするなどの対策を行い、できるだけパパやママが近くで様子を見守ることが大切です。
誤飲に気をつける
赤ちゃんが寝返りをするようになると、部屋の端まで移動できるようになります。そのため、赤ちゃんの近くに誤飲の可能性があるおもちゃやクッションに付属しているボタンなど、小さなものが置かれていないか確認することも大切です。
直径39mm以下のものは赤ちゃんが飲み込んでしまうことがあるといわれています。一般的にトイレットペーパーの芯が39㎜程度のため、トイレットペーパーの芯に入ってしまうサイズは注意が必要です。
⑥まとめ
赤ちゃんが寝返りする時期が気になることもあると思います。けれども、ほかの赤ちゃんと比べるのではなく、まずは赤ちゃんのからだの発達段階と、寝返りする前に必要な動きを知ることで、我が子の「今」に必要な、ママ・パパのサポート方法が見つかっていきます。
「子どもの成長はらせん階段」と言われています。成功と失敗を繰り返しながら、確実に寝返りの完成に向けて進んでいます。赤ちゃんの体調や機嫌をみながら、寝返りのサポートも遊びのひとつとして楽しんでみてくださいね。