1.歯科衛生士ミッキーの離乳食・プレ幼児食®研究とは
こんにちは。歯科衛生士のミッキーです。
私は10年以上にわたり、赤ちゃんの「噛む力」を育むための離乳食研究を続けてきました。
その中で、離乳食からいきなり幼児食へ移行するのではなく、「噛む子を育む」ためにはプレ幼児食®**という移行期の食事が必要であることがわかってきました。
このブログではこれまで、「一般的な離乳食」と「手づかみ離乳食」の違いについて、管理栄養士と共に研究を進め、一般的な離乳食から手づかみ離乳食への移行についてお伝えしてきました。
現在は、プレ幼児食®期の検証をお伝えしています。
本日の研究テーマは
この時期、うどんのカットは必要かです。
2.麺をすする文化
世界的には、食事中に音を立てて食べる行為はマナー違反とされることが多くあります。しかし日本には、麺を音を立ててすするという独特の食文化があります。
ラーメンやそば、うどんなどの麺料理では、すすり音そのものが自然な食べ方として受け入れられてきました。
その理由のひとつは、麺と一緒に空気を取り込むことで香りが立ち上がり、味わいが広がるという感覚的な効果です。
またもうひとつは、熱い麺を空気と一緒に取り込むことで、適度に冷ましながら食べられるという実用的な側面です。
文化とは「正しい・間違い」で分けられるものではなく、「違い」の積み重ねによって形づくられるものです。
日本の食文化として、この“すする”という行為も大切に受け継がれてきました。
ただし、この動作は単純なようでいて、実は高度な身体操作でもあります。
すするという行為は、「空気と一緒に液体や食べ物を口腔内に取り込みながら、空気だけを気管へ送り込む」という繊細な動きです。つまり呼吸のコントロールと密接に関係しています。
そのため、鼻呼吸と口呼吸の使い分けがうまくできないと、麺を上手にすすることは難しくなります。
近年は鼻呼吸が十分にできない子どもが増えており、その意味では「麺をすする」という文化そのものの継承が、静かに揺らぎ始めているのかもしれません。
3.本日のプレ幼児食研究:この時期、うどんのカットは必要か
Aちゃん(2歳3か月)の今日の様子
今月は、Aちゃんがうどんをそのまますすって食べられるのかという検証を行いました。
カメラを向けると、Aちゃんはピースサインのような動作を見せました。
正確には、指と指をそっと合わせるような仕草で、これまでには見られなかった行動です。

ピースサインのような細かい指の動きには、指をそれぞれ独立して動かす高度な運動機能が必要です。
一般的な発達段階としては以下のように整理されます。
- ~1歳:手のひら全体で物を握る、指差しができるようになる
- ~2歳:グー(握る)、パー(開く)ができるようになる
- 3~4歳:親指・人差し指・中指を個別にコントロールし、ピースサインや「OKサイン」が可能になる
(※月齢はあくまで目安です)
手づかみ食べなどを通して指先の使用機会が多かったとしても、2歳3か月の段階では、まだ細かい指の分離運動は発達途中であると考えられます。
一般的に幼児期には、うどんはカットして提供されることが多くあります。
Aちゃんの家庭でも普段は短くカットしているとのことでしたが、この日は試験的に“長いまま”のうどんを提供しました。
するとAちゃんは迷うことなく麺を指でつまみ、口へ運び、そのままチュルっと食べ始めました。

長い麺のため一気にすすり切ることはできず、途中で一度止まり、再び吸い込みながら食べ進めるという動作を繰り返していました。
これは、単純な摂食というよりも「途中で呼吸と動作を調整しながら食べる」という、かなり高度な食べ方とも言えます。
日常的に兄や両親が麺をすする様子を見ていた影響も考えられますが、特別に教えたわけではなく、自然な模倣によって獲得された行動と考えられます。
視点を変えると、この行動は呼吸のコントロールが一定程度できている可能性も示唆します。
口を閉じ、鼻で呼吸をしながら食べることは、口腔機能の発達や歯列形成においても重要な要素です。
このように考えると、口腔育成において「正しい呼吸」を身につけることは、食べ方だけでなく発達全体に関わる基盤であると言えるでしょう。
まとめ
プレ幼児食の観察を通して見えてくるのは、「食べる」という行為が単なる動作ではなく、発達の積み重ねそのものであるということです。
うどんをカットするかどうかという一見シンプルな選択の中にも、指先の発達、口腔機能、そして呼吸のコントロールといった複数の要素が関わっています。
また、麺をすするという日本独自の食文化は、味覚だけでなく呼吸や感覚の協調によって成り立つ、非常に繊細な動作でもあります。
今回の観察からも、子どもは教えられる前に、周囲の食べる姿を見ながら自然に多くのことを吸収していることがうかがえました。
「うどんをカットするかどうか」という判断は単なる調理の工夫ではなく、子どもの発達段階や口腔機能の成熟度を踏まえた一つの関わり方でもあります。
食べる力は、噛む力だけでなく、呼吸し、感じ、真似る力の総合です。
その視点を持つことで、日々の食卓はより豊かな観察の場になっていくのかもしれません。

