両手で持ちやすい形態にしたら肉をかじり取りできるのか-歯科衛生士ミッキー 離乳食&幼児食研究手づかみ離乳食からプレ幼児食®へ⑧-

幼児が食事の茶碗を保護者に楽しそうに見せている様子
目次

1.歯科衛生士ミッキーの離乳食・プレ幼児食®研究とは

こんにちは。歯科衛生士のミッキーです。

私は10年以上にわたり、赤ちゃんの「噛む力」を育むための離乳食研究を続けてきました。
その中で、離乳食からいきなり幼児食へ移行するのではなく、「噛む子を育む」ためにはプレ幼児食®**という移行期の食事が必要であることがわかってきました。

このブログではこれまで、「一般的な離乳食」と「手づかみ離乳食」の違いについて、管理栄養士と共に研究を進め、一般的な離乳食から手づかみ離乳食への移行についてお伝えしてきました。

現在は、プレ幼児食®期の検証をお伝えしています。

本日の研究テーマは、

「両手で持ちやすい形態にしたら肉をかじり取りできるのか」です。

2.アフォーダンスとは

「アフォーダンス」という言葉をご存じでしょうか。

アフォーダンス

モノの形や性質、環境との関係によって、人が自然と行動したくなること

私は、手づかみ食べとアフォーダンスはとても関係が深いと考えています。

例えば、手で持ちやすい大きさのおにぎりや、つまみやすい形の野菜、お子さんの発達に合った形態の食べ物が目の前に置かれていたら、子どもは自然と手を伸ばします。

これはこれまでの離乳食・幼児食研究の観察からもわかってきたことです。

実は子どもたちは、大人が思う以上に環境から影響を受けています。

やりたくなる環境があれば、自ら動き出します。

反対に、どんなに声をかけても、環境が整っていなければ行動につながりにくいこともあります。

子育ては、子どもをコントロールすることではありません。子どもが自分の力で育っていくための環境を整えることです。

アフォーダンスという考え方は、

「どうしたら言うことを聞くか」

ではなく、

「どうしたら自分からやりたくなるか」

という視点を与えてくれます。

今回の研究は、そんなアフォーダンスの力を確かめる研究でもあります。

3.本日のプレ幼児食研究

両手で持ちやすい形態にしたら肉をかじり取りできるのか

Aちゃん(25か月)の今日の様子

本日の研究では、ごぼうを持ち手にし、その中央にひき肉をつけた形態を用意しました。

Aちゃんがごぼうを両手で持ち、中央のひき肉を前歯でかじり取ることができるのかを観察しました。

するとAちゃんは、こちらが何も声をかけていないにもかかわらず、ごぼうを両手で持ち、中央のひき肉を前歯で「かぶっ」とかじり取りました。

ひき肉にはしっかり歯型が残っていました。

まるで、

「前歯でかじり取れたよ!」

というAちゃんの勲章のようです。

まさにアフォーダンスという考え方を実感した瞬間でした。

幼児が両手でお肉を掴んで食べてる様子

ピクルスの酢をだしで3倍に薄め、きゅうりやにんじんを1cm角に切って提供しました。Aちゃんは細かいものをつまむことが得意な時期です。

指先を上手に使いながらピクルスを食べていました。

これもアフォーダンスの一つです。

酸味のある味にも、だしで薄めることで少しずつ慣れていくことができます。

最後にはピクルス液を「ずずっ」と飲み干してしまい、とても気に入った様子でした。

幼児がお椀でお汁を飲んでいる様子

Aちゃんは味噌汁を手に引っかけてこぼしてしまいました。

一般的には汁椀は子どもから見て右側に置くことが多いですが、保護者のお話では、右に置くといつも引っかけてしまうため、左側に置いているそうです。

何かをしながら別のことにも注意を払うことは、2歳児にとってまだ難しいことです。

食文化やルールも大切ですが、それ以上に大切なのは、お子さんが食べやすい環境を整えることだと思います。

Aちゃんにとっては、汁椀を左に置くことが今の発達段階に合った環境づくりなのかもしれません。

幼児が手づかみでお米を避けている様子

Aちゃんはご飯茶碗の中の絵が大好きです。

以前は、「ご飯を食べると絵が見えてくる」というアフォーダンスを利用していました。ところが最近は、「ご飯を食べなくても、ご飯をどかせば絵が見える」ことに気づきました。

そして、ご飯をよけて絵を見ています。

これもまた知能の発達です。

お母さんと茶碗を見せ合う姿は、とても愛らしいものでした。

幼児がごぼうを手づかみでかじっている様子

Aちゃんは味噌汁のお麩が大好物です。もっとお麩が欲しいという意思を示しました。そこで私は、「ごぼうにチャレンジしてみる?」と声をかけました。

Aちゃんはごぼうをひとかじりしました。

子育てでは、「〇〇したら〇〇をあげるのは良くない」という意見があります。

交換条件がないと行動できなくなるという考え方です。

私も、その考えには一理あると思います。

ただ、今回私が大切にしたかったのは取引ではありません。ごぼうを全部食べることでもありません。

  • 「まず口に入れてみる」
  • 「まずチャレンジしてみる」

その経験を後押ししたかったのです。

Aちゃんはごぼうに挑戦しました。

だから私は、そのチャレンジを認めました。

2歳代の子どもは、

  • 見る
  • 触る
  • 匂いをかぐ
  • 口につける
  • なめる
  • 噛む
  • 飲み込む

という段階を経ながら新しい食べ物を受け入れていきます。

そのため、「食べたか、食べなかったか」だけではなく、「どこまで関わることができたか」を見ることも大切です。

2歳児は全部食べさせる時期ではなく、食べ物と仲良くなる時期です。

興味を持つこと。触れてみること。口に入れてみること。

その一つひとつの経験が、将来の食べる力につながっていくのです。

私たちは「食べた・食べない」の二択ではなく、お子さん自身が何を感じ、どう行動し、その結果どうなったのかを大切にしています。

それが食育実践予防歯科の手づかみ離乳食、そしてプレ幼児食®の考え方です。

まとめ

今回の研究では、ごぼうを持ち手にして中央にひき肉をつけることで、Aちゃんが自然に両手で持ち、前歯でひき肉をかじり取る姿を観察することができました。

こちらが「かじってごらん」と指示したわけではありません。

持ちたくなる形、かじり取りたくなる形が、Aちゃんの行動を自然に引き出したのです。まさにアフォーダンスの力を実感した場面でした。

また、ピクルスを指先でつまむ姿、食器の位置によって食べやすさが変わること、ご飯茶碗の絵から知能の発達が見られたことなど、子どもは環境から多くの影響を受けながら成長していることを改めて感じました。

そして、お麩をきっかけにごぼうへ挑戦した場面では、「食べた・食べない」という結果だけではなく、「やってみよう」と思えたことそのものに価値があることを再確認しました。

子どもの食べる力は、大人が教え込むことで育つのではなく、子ども自身が興味を持ち、試し、経験を積み重ねることで育っていきます。

私たち大人にできることは、食べさせることではなく、子どもが思わず手を伸ばしたくなる環境を整えることなのかもしれません。

これからもプレ幼児食®研究を通して、「噛む子を育む環境づくり」について検証を続けていきたいと思います。

子どもを育てるのは大人だけではありません。環境もまた、子どもを育んでいるのです。

幼児が食事の茶碗を保護者に楽しそうに見せている様子

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