食卓でみられる記憶と言葉の発達-手づかみ離乳食からプレ幼児食®へ⑨-

幼児が楽しそうに食事をしている様子
目次

1.歯科衛生士ミッキーの離乳食・プレ幼児食®研究とは

こんにちは。歯科衛生士のミッキーです。

私は10年以上にわたり、赤ちゃんの「噛む力」を育むための離乳食研究を続けてきました。

その中で、離乳食からいきなり幼児食へ移行するのではなく、「噛む子を育む」ためには**プレ幼児食®**という移行期の食事が必要であることがわかってきました。

このブログではこれまで、「一般的な離乳食」と「手づかみ離乳食」の違いについて、管理栄養士と共に研究を進め、一般的な離乳食から手づかみ離乳食への移行についてお伝えしてきました。

現在は、プレ幼児食®期の検証をお伝えしています。

本日の研究テーマは、

食卓でみられる記憶と言葉の発達です。

2.目の前にないものを思い出す力とは

乳幼児は、大人のすることをよく見ています。

ママが手をたたくと一緒に手をたたいたり、「バイバイ」と手を振ると真似して手を振ったりします。

このように、目の前で見たことをその場ですぐに真似することを「模倣」といいます。

そして成長してくると、その場ですぐに真似をするだけではなく、以前見たことや経験したことを覚えていて、時間がたってから思い出して再現することができるようになります。

このような行動を専門用語で「遅延模倣(ちえんもほう)」といいます。

目の前の動きを見ながら真似をする「模倣」と違い、「遅延模倣」では、真似をする相手や出来事はもう目の前にはありません。

  • 「見ていた」
  • 「覚えていた」
  • 「思い出した」
  • 「やってみた」

ということが必要になります。

つまり「今、目の前にあるものを真似する」から、「以前の経験を覚えていて、あとから再現する」へ。

同じ「真似」に見えても、子どもの中では記憶する力や思い出す力が育ってきているのです。

そして、さらに言葉が育ってくると、行動で再現するだけではなく目の前にない人や物、以前経験した出来事を思い出して、言葉で表現する姿も見られるようになります。

「今、ここにないもの」のことを話すためには、その人や物、出来事を覚えていて、頭の中に思い浮かべることが必要です。

今まで目の前にあるものについて話していた子どもが、ある日突然、そこにはいない人や物のことを話し始める。

そんな何気ない言葉の中にも、

  • 「覚えていたんだ」
  • 「思い出したんだ」
  • 「それを言葉にできるようになったんだ」

という成長が隠れています。

毎日の食卓でも、子どもの言葉に耳を傾けていると、こんな変化に出会うことがあります。

そんなときは「〇〇のことを思い出したんだね」などと声をかけてあげると、そこからまた会話が広がっていくかもしれません。

今回は、Aちゃんの食卓で、まさにそんな成長を感じる場面がありました。

3.本日のプレ幼児食研究

食卓でみられる記憶と言葉の発達

Aちゃん(26か月)の今日の様子

今回はAちゃんの「言葉」を追いかけてみます。

食事が始まると、Aちゃんからいろいろな言葉が聞こえてきました。

Aちゃんは「おてて」と言って、自分の手を上に挙げました。

「手で食べているよ」という意思表示なのかな、と私は感じました。

「おいしい」と言いながら、手を頬に添えるジェスチャーも見せてくれました。とても愛らしい姿です。

ママのお皿を指さして、

「いっしょ、いっしょ」

そして、お味噌汁を全部飲み干したAちゃんは、

「うま~い!」

これは、普段の食卓でママやパパが言っている言葉の真似です。

いつも聞いているママやパパの言葉を覚え、Aちゃんも使うようになっています。

そんな中、今回とても興味深い場面がありました。

Aちゃんが突然、

「バロン、ジャンプ」

と言いました。

私はあまりにも唐突な言葉だったので、Aちゃんが何を言っているのか意味がわかりませんでした。

するとママが、

「バロンは、じいじが飼い始めた犬のことです」

と教えてくれました。

でも、今ここにバロンはいません。

Aちゃんは、以前見たバロンの姿を思い出して話しているようです。

さらに、

「バロン、うんち」

とも話していました。

目の前にいる人や物について話すだけではなく、今ここにいないバロンのことを思い出し、それを言葉にする姿が見られました。

今までは、目の前にあるものや、その場で起きていることを言葉にしていたAちゃん。

そのAちゃんが、目の前にいないバロンのことを思い出して話しています。

Aちゃんの言葉の発達を感じた瞬間でした。

「これなあに?」

気になったものを指さしながら聞く姿もあります。

指をさす。
言葉にする。
相手の反応を待つ。

言葉だけではなく、気持ちと行動が一緒になって、やりとりがどんどん広がっています。

また、ママのことを指さしながら「Mちゃん」、自分のことを指さしながら「Aちゃん」と名前を呼んでいました。

普段、家族が呼んでいる名前を聞いて覚え、自分でも使うようになったのでしょうか。

普段の生活の中で耳にしている言葉が、Aちゃん自身の言葉として、いろいろな場面で出てくるようになっています。

食卓で交わされる言葉を聞く。
家族のすることを見る。
一緒に経験する。

そして、それを覚えていて、別の場面で言葉や行動として表現する。

2歳6か月のAちゃんを見ていると、「真似する」だけだった頃から、覚えていたことを思い出し、自分から表現する姿へと変わってきていることがわかります。

食卓は「食べる」だけの場所ではありません。

毎日の何気ない家族との食事の中で、Aちゃんはたくさんの言葉を聞き、人の行動を見て、真似をし、覚えています。

そして、その積み重ねが少しずつAちゃんの言葉になり、家族との「会話」へとつながってきました。

今回のAちゃんは、もうこちらが一方的に話しかけるだけではありません。

言葉を聞いて、言葉を返す。
自分から伝える。
相手の言葉に応える。

「会話が成り立つようになってきた」

そんな成長を感じる食卓になりました。

4.まとめ

これまでAちゃんの食事の様子を観察しながら、「何をどのように食べるのか」「どのように噛んでいるのか」ということを中心に追いかけてきました。

でも、食卓で育っているのは「食べる力」だけではありません。

今回、Aちゃんの言葉を追いかけてみると、普段ママやパパが使っている言葉を真似するだけでなく、覚えていたことを思い出して、自分から言葉にする姿が見られるようになっていました。

中でも私が一番成長を感じたのは、

「バロン、ジャンプ」

という言葉でした。

目の前にバロンはいないのに、以前見たバロンの姿を思い出して言葉にする。

今までのAちゃんは、目の前にあるものや、その場で起きていることを言葉にすることが多かったので、「ここにいないバロン」の話を突然始めたことに、私はとても驚きました。

子どもは、毎日の生活の中で大人が思っている以上に、よく見て、よく聞いて、覚えているのですね。

そして、覚えていたことを思い出し、言葉や行動として表現するようになっていきます。

食卓は食べることを学ぶ場所であると同時に、家族の言葉を聞き、真似をし、やりとりをしながら、言葉や記憶も育っていく場所なのだと、今回のAちゃんの姿から改めて感じました。

手づかみ離乳食を始めた頃からずっとAちゃんを見てきたからこそ、「食べる力」だけではない成長にも気づくことができます。

これからAちゃんの言葉がどのように増え、食卓での家族との会話がどのように変化していくのか。

「食べる」と一緒に育っていくAちゃんの姿を、これからも追いかけていきたいと思います。

幼児が楽しそうに食事をしている様子

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